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光子と物質の相互作用Part1

光子と物質の相互作用

こんにちは。今回は光子と物質の相互作用についてです。この分野も少し量が多いので、Part1とPart2で分けて行います。

様々な言葉が出てきますので1つずつ覚えていきましょう。

ここでの光子は、X線とγ線です。(X線とγ線が何かはすでに講義していますので戻って確認してみてください。)

光子は電荷を持たないので、荷電粒子のようにエネルギー損失を起こすことはありません。

要するに、阻止能や飛程というのは光子では出てきません。

光子と物質の相互作用は、光電効果、コンプトン散乱、電子対生成があり、それらによって光子はエネルギーを電子に与えます。それでは、1つずつ反応を見ていきましょう。

まずは、光電効果についてです。

光電効果は光子が軌道電子にエネルギーを与え、軌道電子が原子から飛び出す現象のことをいいいます。飛び出す電子のことを光電子といいます。

光電子のエネルギーは入射光子のエネルギーと電子の束縛エネルギーの差です。このことから、入射光子のエネルギーが束縛エネルギーよりも低いと光電子は発生しません。

また、光子は軌道電子と反応しますが、自由電子とは反応しません。これは、運動量とエネルギー保存則を同時に満たすことができないからです。

光電効果の断面積(確率)についてです。

光電効果の断面積は原子番号の5乗に比例し、入射光子のエネルギーのー3.5乗に比例します。

そして、複数の殻で光電効果が可能な場合、内側の殻の方が起こりやすいです。

吸収端についてです。

光電子のエネルギーの式より、入射光子のエネルギーが電子の束縛エネルギーより低いと軌道電子は飛び出しません。

そのため、k殻、L殻などの軌道電子の束縛エネルギーのところで断面積が急激に増加するところを「吸収端」と言います。

そして、k殻での断面積増加をk吸収端、L殻ではL吸収端といいます。吸収端では光電効果が起こりやすいって事です。

次はコンプトン散乱についてです。

光子と電子が衝突で電子と散乱光子が生じる現象です。

詳しく見ていきましょう。

さっきの図にいろいろ書き足しました。

入射光子のエネルギーk0、散乱光子のエネルギーk、光子の散乱角θ、電子の反跳角Φ、反跳電子の運動量Pです。

コンプトン効果では、衝突の前後で運動量とエネルギー保存則を満たします。それでは、これより式で表してみましょう。

光子をエネルギーと運動量をもった粒子と考えると、散乱前後の運動量保存則とエネルギー保存則より

黒板にあるように書けます。高校物理で運動量保存則、エネルギー保存則について習いますので思い出してください。

k/cはE=hνより式変形していくと、E=k/cになります。実際に式変形してみてください。

①、②式より散乱された光子のエネルギーは黒板の式にあるようになります。この講義では、端的に説明したいので、途中の計算は省きます。途中の計算も後の講義でやりたいと思っています。

そして、コンプトン散乱前後の光子の波長の差が黒板にある2つ目の式になります。

これも途中計算は省きますが、後に講義やりたいと思っています。

散乱されたコンプトン電子のエネルギーは入射光子のエネルギーから散乱光子のエネルギーを引いた値になります。

これは、先ほど書いた図からもわかると思います。

散乱光子のエネルギーが0になることはないので、コンプトン反跳電子のエネルギーと入射光子のエネルギーは等しくなることはありません。

コンプトン効果の特徴です。

コンプトン散乱の断面積は原子番号Zに比例します。光子と電子の散乱なので電子数が多くなるとそれだけ反応が起こることは想像つきますね。

入射光子のエネルギーが高くなると前方への散乱が増えます。

コンプトン散乱は光子の粒子性を表しています。

コンプトン効果は光子と電子の衝突と言いましたが、その電子が自由電子なのか、軌道電子なのかを言わずに濁していました。

本来は、コンプトン効果は、自由電子との衝突です。

しかし、自然に存在する電子はほとんどが原子に存在する軌道電子です。そのため、物質との相互作用では正確にはコンプトン効果ではないのです。

通常光子のエネルギーが大きく、軌道電子の束縛エネルギーを無視できるほど大きいので、無視することができ、コンプトン効果として扱っていることが多いのです。

次は電子対生成についてです。

光子が原子核の強い電場に吸収され、電子と陽電子が発生する反応をいいます。

電子対生成は、光子のエネルギーが電子の静止エネルギーの2倍の1.022MeV以上でないと起きません。

原子核の電場に吸収され、生成された陽電子は、電子の反粒子で、特徴としては電子と同じで、電荷だけが違うだけです。

生成された陽電子は、物質中を減速しながら進んでいき、物質中の電子と結合して2本の0.511MeVの消滅放射線を放出して、消滅します。

物質中の電子とで消滅放射線が放出されますが、電子対生成で生成された電子と結合するわけではありません。

電子対生成での電子と陽電子のエネルギーは入射光子のエネルギーから1.022MeVを引いた値が分配されます。電子と陽電子のエネルギーは0~(E-1.022MeV)の間で分布します。

電子対生成の特徴についてです。

断面積は、エネルギーが高くなると増加し、原子番号Zの2乗に比例します。

電子と陽電子がほぼ同じエネルギーになることはほぼ無いです。

そして、電子と陽電子が正反対の方向に放出されることはありません。入射光子のエネルギーによって放出される角度が変わってきます。

消滅放射線は反対方向に放出されますので、混合しないように気を付けましょう。

これで、光子と物質の相互作用Part1は終わります。お疲れ様でした。

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