こんにちは。今回は、分子レベルの影響 DNAの損傷と修復についてです。
放射線の影響の最初の過程の話です。DNAの構造から順に見ていきましょう。
まずは、損傷、修復の前にDNAの構造を見ていきましょう。ポイントを抑えて説明していきます。細かい分子構造や結合等は講義しません。
塩基、糖、リン酸が1つの分子として結合したヌクレオチドというものが数多く配列し、らせん状に2本並んだ大きい分子がDNAです。
2重らせん構造をしています。
DNAを構成する塩基は、アデニン、グアニン、チミン、シトシンと4種あり、プリン塩基、ピリミジン塩基と構造の違いで分けられています。
向かい合う塩基同士は決まっており、AとT、GとC、と成っています。AーTでは2本の水素結合、GーCでは3本の水素結合で鎖をつないでいます。
DNAの複製についてです。生物の体を構成するDNAは、原則として全て同じ遺伝情報をもっています。人間の体も同様です。
1つのDNAが細胞分裂の前に複製されるからです。細胞分裂する毎に遺伝情報を失うことのないようになっています。
DNA複製の概念を簡単に説明します。ヌクレオチド鎖のみの簡易な図で説明します。
分裂前のDNA(ヌクレオチド鎖)があります。そのDNA鎖がほどかれ、それぞれの塩基に組み合うように新しいヌクレオチド鎖が合成されます。 もともとのヌクレオチド鎖は残ったまま(青線)、新しいヌクレオチド鎖がくっついた(赤線)「半保存的複製」によりDNA複製が行われます。
放射線によって起こるDNA損傷は、起こりやすい順に塩基損傷、塩基遊離、1本鎖切断、2本鎖切断があります。
この損傷の修復を正しく行われない誤修復は突然変異をもたらし、発がんの原因となります。また、修復されなかった場合、細胞死に至ります。
このDNAの損傷は放射線に限った話ではなく、紫外線、たばこやストレス等でも起こります。
塩基損傷は、ヒドロキシラジカルの酸化的損傷で引き起こされます。
塩基遊離は塩基と糖の結合が切断される脱塩基反応です。プリン塩基で起こりやすいです。
高LET放射線では電離密度が密なので、2本鎖切断の割合が増えます。
2本鎖切断は細胞致死に関連するとされています。
紫外線による損傷でピリミジン2量体があります。ピリミジンダイマーともいいます。隣り合ったピリミジン塩基に共有結合ができるものです。チミンーチミン間で発生頻度が高いです。
DNA損傷は各種の酵素の働きによって修復されます。
酵素の種類については覚える必要はありません。どのような修復をするのかを確認してください。
はじめに説明するのは、紫外線による損傷の修復です。
光回復は光回復酵素がある中、可視光のエネルギーを利用してピリミジンダイマーの結合を元に戻す回復です。光回復酵素は、哺乳動物には存在していません。
カメとかサンゴ、バクテリアなどにあります。
ヌクレオチド除去修復は、損傷した箇所の塩基、ヌクレオチドが切りとられ、切り取られた箇所に塩基、ヌクレオチドが合成されて修復します。
人間のピリミジンダイマーからの修復機構です。
この修復機構を欠いた先天性遺伝疾患に「色素性乾皮症」という病気があります。その患者さんは、ヌクレオチド除去修復に必要な酵素を持っておらず、
ピリミジンダイマーを修復することができないのです。そのため、紫外線高感受性で、皮膚がんの発生確率が高くなります。
組み替え修復は、放射線による損傷の1本鎖切断の修復をします。修復の過程は省略します。参考書等に図で説明されていると思います。
非相同末端結合、相同組み換え修復は、2本鎖切断の修復をします。
修復の過程を問う問題がありますので、問題解説の時に一緒に過程も説明していきたいと思います。
試験にでるポイントだけ講義しておきます。
相同組み替え修復は、損傷した部分を、損傷のない相同DNAを鋳型として組み替えられ、修復されます。
誤りの少ない修復です。
相同な2本鎖DNA(姉妹染色体)の情報を使うので、細胞周期のDNA合成された後のS期後半からG2期に修復されます。
非相同末端結合修復は、2本の切断部位をそのまま再結合する修復です。切断部位の塩基配列の情報は失ったまま再結合するので、再結合された部分の
塩基配列は本来の配列とは異なるので、誤りが起きやすくなります。相同DNA(姉妹染色体)は必要としません。
これらの修復も蛋白質や酵素が働いています。蛋白質や酵素の種類を覚える必要はありません。
以上で、分子レベルの影響 DNAの損傷、修復について終わります。
そして、ここまでが分子レベルの影響の話でした。放射線生物の影響の最初の過程ですので、たくさんの言葉が出てきましたが覚えましょう。 お疲れ様でした。
コメント