こんにちは。
今回は臓器レベルの影響 小腸 皮膚 水晶体 について講義していきます。
小腸です。
小腸の粘膜には、数多くの絨毛があります。絨毛がある事で、表面積が大きくなりよりたくさんの栄養を吸収する事ができます。
そしてその絨毛の上皮は、大部分を吸収上皮細胞が占めています。
絨毛の付け根にクリプト(腺窩)があって、吸収上皮細胞をつくる細胞があります。
吸収上皮細胞は腸絨毛の先端に向かって移動していき、それに従い成熟していき、2〜3日後に先端で脱落して寿命をむかえます。
絨毛の先端ほど、吸収能力が高いです。
消化管は食道、胃、小腸、大腸そして肛門に向かいます。
小腸の始まりの部分の十二指腸が特に放射線感受性が高いです。
消化管の放射線感受性は、小腸、大腸、胃、食道の順に低くなります。
小腸に10Gy以上の急性照射を受けると、クリプトの細胞分裂が停止し、新たな吸収上皮細胞が造られなくなります。
もともと存在していた、吸収上皮細胞の絨毛の先端での脱落は継続しています。
粘膜上皮の剥離、萎縮および潰瘍が起こります。
上皮細胞の寿命の関係から、被ばく後2~3日後に下痢の影響が出てきます。
線量が高くなると消化管中のリンパ濾胞(ろほう)が穿孔し下血がみられます。
次は皮膚についてです。皮膚は表面から、表皮、真皮、皮下組織の順になっています。
皮膚の表面から30~100μmの深さ、表皮の最下層に基底細胞層があります。
細胞分裂を盛んに行っており、放射線の感受性が高い所になります。基底細胞層は同じ深さにあるわけでなく、波打っているように存在しています。浅いところで30μm、深いところでは100μmで、平均70μmの深さの所に存在します。
皮膚の等価線量では、70μm線量当量を使用している理由はこれです。
この基底細胞から分裂した細胞が皮膚の表面へ押し上げられていき、後に角質化して脱落していきます。
そして、真皮内には毛のうがあり、細胞分裂を行い、毛の伸長の元になります。
毛のうは放射線感受性が高く、放射線被ばくにより脱毛が生じます。
ここからは放射線による皮膚障害についてです。
急性放射線皮膚障害では、被ばく線量が大きくなると、その分損傷も強く現れてきます。
第1度から第4度まで分類されます。
後期皮膚反応は、急性皮膚反応の後6~24ヶ月してから起こります。
分類した表になります。しきい線量、潜伏期間、障害等確認してください。
皮膚障害について少し説明します。
紅斑についてです。紅斑は「初期紅斑」と「主紅斑」があります。初期紅斑は、毛細血管が拡張することで皮膚が赤くなります。
初期紅斑は照射後最も早く見られる皮膚障害です。
主紅斑は細動脈(動脈から毛細血管に至る直前の動脈のこと)が部分的に狭窄することが原因になります。
もう一つ、落屑についてです。
「乾性落屑」と「湿性落屑」があります。乾性落屑は、皮膚がかさかさしてかゆくなってきます。基底細胞層の幹細胞が死亡することにより、細胞数が減少し、角質化することで生じます。
湿性落屑は、皮膚がじゅくじゅくしてきます。水ぶくれのようになる時もあります。水疱形成、びらんなどが起こります。
放射線被ばくによって、皮脂腺が影響を受け、線量が低いときは分泌液が減少することで、乾性落屑となります。線量が増え、水疱が生じてくると湿性落屑になります。
放射線被ばくを受けても痛みは感じませんので、皮膚の痛みは感じると思いますが、照射直後に痛みを感じるということはありません。
放射線治療を行っている患者さんにはこの皮膚の障害は実際にあります。皮膚の障害を理解して治療や、皮膚の炎症のケアをしていかないといけません。
次は眼の障害の水晶体についてです。
水晶体の全面に上皮細胞があり、放射線感受性が高いです。
急性障害で、角膜炎、結膜炎があり、晩発性障害では白内障、角結膜炎があります。
放射線被ばくにより損傷を受けると水晶体混濁の原因となり、混濁の程度が進んで視力低下が現れてきた状態を白内障といいます。
白内障のしきい線量は0.5Gyとされています。
潜伏期間は6ヶ月から長くて35年とされています。平均として2~3年で発症します。
しかし、実際は、発症した白内障は放射線によるものなのか、老化に伴う影響なのかは実際はわかりません。
+αですが、中性子線はX線やγ線に比べて白内障を起こしやすいです。
これで今回の講義は終わります。お疲れ様でした。
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