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臓器レベルの影響 造血臓器 生殖腺

こんにちは。今回は、臓器レベルの影響の話です。様々な臓器での放射線の影響の話です。

ここでは、造血臓器、生殖腺について説明します。

講義を始める前に、抑える点3ポイントを説明します。

まず、1臓器の構造、感受性が高い部分はどこかです。臓器の構造、解剖になっているかを確認します。そして、どこの部分の細胞が放射線感受性が高いのかを抑えましょう。

2放射線被ばくでの影響です。放射線被ばくを受けた際に、その臓器がどのような過程を経るのか、そしてどのような影響が現れるのか抑えましょう。

3しきい線量です。どのくらいの線量を受けると影響が出るのか抑えましょう。

それでは、1つずつ見ていきましょう。

まずは、造血臓器です。血を造る臓器です。

赤血球、白血球など血液細胞を産生する臓器です。骨髄、リンパ節が造血臓器にあたります。

胎児期では、肝臓や脾臓も造血機能を持っています。

骨髄は、造血機能を持つ赤色骨髄、脂肪変性し造血機能を失った白色骨髄に分けられます。

小児期では、ほとんど全ての骨髄が赤色骨髄ですが、年を重ねる毎に白色骨髄の割合が増えていきます。

末梢血中の血球の分類です。

赤血球、白血球、血小板があります。

赤血球は 、血液循環 によって体中を回り、 肺 から得た 酸素 を取り込み、体の隅々の細胞に運び供給する役割をし、また同様に 二酸化炭素 の排出も行います。

白血球は、体内に侵入してきた異物(感染性微生物、細菌、外来物質など)を処理する役割などをもっています。

血小板は、血栓 の形成に中心的な役割をもっていて、血管 壁が損傷した時に集合してその傷口をふさぎ(血小板凝集) 、止血する作用があります。

赤血球や血小板は核をもっていませんが、白血球は核をもっています。

白血球は、顆粒球、単球、リンパ球と分類され、さらに顆粒球は好酸球、好中球、好塩基球に分類されます。そして、リンパ球はB細胞、T細胞、NK細胞に分類されます。

それぞれ、放射線の影響に差があります。また、白血球では、リンパ球を除き、顆粒球の種類による放射線の影響の違いは特にありません。

数Gyの全身被ばく後の血球数の変化を表した図です。

造血臓器では、放射線被ばくの影響は血球数の減少で見られます。

血球数の減少は造血幹細胞(骨髄に存在し、赤血球、白血球、血小板をつくっている細胞のこと)の細胞増殖が停止し血球の産生が停止と、血球の寿命の両方によって起こります。

血球の寿命は、赤血球は約120日、血小板は約10日、白血球は数時間から数日です。

ざっくり言うと、放射線の影響で、造血幹細胞が停止し、血球産生が止まり、元々あった血球が寿命でなくなり、血球数が減少します。そして、造血幹細胞が回復してくると徐々に血球が産生されていくのです。

この図と絡めて、それぞれの血球の放射線影響を見ていきます。

白血球のリンパ球についてです。

リンパ球は、リンパ芽球、幼若リンパ球、リンパ球と分化していきます。しかし、分化しても放射線感受性は低下せず、分化したリンパ球の感受性が高いです。そのため、ベルゴニートリボンドーの法則の例外といわれています。

リンパ球減少のしきい線量は0.25Gyです。

先ほどの図では、リンパ球が放射線を受けると、すぐに減少し、回復していましたね。

それは、放射線被ばくにより、リンパ球はアポトーシスを起こし、細胞死します。そのため、24時間以内で白血球の減少が観察されます。そして、リンパ球の回復は他の血球より遅くなっています。

顆粒球です。

先ほどの図(数Gyの全身被ばく後の血球数の変化を表した図)から特徴を黒板に示します。

放射線被ばく後1~2日で血球数が増加します。これは脾臓の貯蔵プールから一過性の放出が行われるためと言われています。

そして、3~4日で最低値になります。そして、回復はリンパ球よりも早く3~4週間で照射前と同じ程度まで戻ります。

血小板です。

放射線被ばく後、顆粒球より遅れて減少し始めます。そして、10日後前後で最低値となります。

その後回復しますが、他の血球に比べ回復が開始されるまでが遅いです。

血小板は、止血作用しますので、血小板が減少するということは、止血作用がそこなわれることから、出血傾向がみられます。

赤血球です。

赤血球は人では寿命が120日です。放射線被ばく後の赤血球数は他の血球に比べて減少は顕著ではありません。

寿命が120日と長く、減少が起こる前に造血幹細胞が回復してきて、細胞産生能力が戻ってきますので血球数の減少はわずかになります。

これで造血臓器の影響は終わりです。

次は生殖腺の放射線の影響を見ていきます。

生殖腺の放射線障害は、確定的影響は不妊です。確率的影響では、遺伝的影響です。

それでは、男性の精巣、女性の卵巣について見ていきます。

男性の生殖腺である精巣です。

精巣では、精原細胞、精母細胞、精細胞、精子と分化します。

放射線感受性は、精原細胞で高く、分化していくと感受性は低下します。これはベルゴニートリボンドーの法則で少しやりましたね。

精原細胞は0.15Gy の急性被ばくにより細胞死が起こり、一時的受胎能力の低下が起こります。

0.15Gyはかなり低いものですが、(放射線の影響を低減させる)分割照射や線量率を下げた照射を行っても、しきい線量はほとんど変わらず、影響が発生します。

しきい線量を超え被ばく線量が高くなるほど回復には時間がかかります。だいたい数ヶ月から数年です。

そして、3.5~6Gyの被ばく線量になると精原細胞はほとんど全て死んでしまいます。そのため、永久不妊になります。

余談ですが、精子は寿命が長い(3~5日間)ので、永久不妊線量を被ばくした後、しばらくは不妊にはならないのです。不妊の要因は精原細胞の細胞死ですから、精子になるための親元の精原細胞が全て細胞死しても、すでに存在していた精子は、感受性が低いので死滅することなく残るからです。

女性の生殖腺の卵巣です。

ここで簡単に卵子の形成を見ていきます。

卵子の基になる卵原細胞が分化していきます。卵原細胞が一次卵母細胞へと成長し、この一次卵母細胞は分裂して、大きい二次卵母細胞と第一極体に分かれます。

二次卵母細胞はさらに分裂して卵子と第二極体に分かれます。

極体は、核と少量の細胞質しかもっておらず、やがて消滅します。

このように、卵子は形成されます。

胎児期にすでに卵母細胞まで分化していて、そこで停まっています。思春期を迎えると、卵母細胞で停まっていた分化が再開され性周期で排卵が起こります。

分化が停まっている卵母細胞の放射線感受性は低いですが、 分化が再開した第二次卵母細胞の放射線感受性は非常に高いです。リンパ球と同様にアポトーシスで細胞死が起こります。

しきい線量0.65~1.5Gyでは、一時的受胎能力の低下が起き、しきい線量2.5~6Gyで永久不妊になります。

永久不妊のしきい線量は、若い女性ほど高く5~6Gyで、年齢の増加に伴い永久不妊線量が低下します。

ここで、余談です。不妊についてしきい線量を説明していましたが、実際、放射線を用いた検査で不妊は

起きるのでしょうか。

正解は起きません。

検査別の線量を黒板に示しました。これは1回当たりの線量になります。

検査部位や一般撮影だと何枚撮影するのかで変わってきますが、不妊のしきい線量には達しませんので起きないと言えます。

しかし、放射線被ばくによる染色体異常、突然変異が起こる可能性はあります。突然変異を次の世代に伝えてしまう可能性があるので、不妊にならないとはいえ、不必要な被ばくは避け、防護を行うことは必要になります。

これで、今回の講義は終わりです。お疲れ様でした。

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