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分子レベルの影響 直接作用 間接作用

分子レベルの影響

こんにちは。今回は、分子レベルの影響 直接作用 間接作用を見ていきます。

最初に言いましたが、生物は段階(レベル)順で見ていきます。理由はすでに説明していますね。

放射線の標的はDNAでしたね。分子レベルの影響の話では、そのDNAを見ていきます。DNA損傷です。

DNA損傷の起こり方として、直接作用と間接作用があります。

直接作用は、放射線による電離・励起がDNAを構成する原子に起き、直接的にDNA損傷を生じさせます。

間接作用は、放射線による影響で、水分子を電離・励起し、そこで生じたフリーラジカルというものがDNAを損傷させます。

直接作用を起こすのは高LET放射線(α線、中性子線、重イオン線など)で、間接作用を起こすのは低LET放射線(X線やγ線など)です。

高LET、低LETは後に講義で出てきます。

フリーラジカルについて説明します。フリーラジカルは単にラジカルともよばれます。

ラジカルとは、不対電子を持つ原子や分子のことをいいます。中学高校の化学で習ったと思いますが、分子は電子の結合で成っていますよね。

電子はペアで同じ軌道上に存在しています。同じ軌道上にひとつしかない電子のことをいいます。

不対電子があるということは手を伸ばしてる感じです。手を伸ばしてる同士、繋ぎあうことで、安定します。

例えば、水素はHとして存在せず、H2として存在してますよね。Hのままでは軌道電子が1個しかなく、不対電子なのです。そのため、HとH同士が手をつなぎあい(結合)

安定し存在しているのです。

原子、分子に不対電子があると、不安定であり、安定しようと反応に富んでいます。

フリーラジカルが存在すると、フリーラジカルは無理矢理にでも他の原子、分子の電子を奪いとろうとし、奪い取られると、その物質は酸化されたことになり機能を失います。

これがフリーラジカルの行いです。

間接作用ででてきたフリーラジカルについてです。

水分子が放射線照射によって、電離・励起されることで生成されます。

反応を式で見ていきましょう。

まずは励起の時です。励起された水分子は、HラジカルとOHラジカルを生成します。

次は、電離です。

電離の時の反応は、段階が多いので、丁寧に整理してください。電子式で書いて整理してみるとわかりやすいと思います。

注意として、イオンとラジカルがごちゃごちゃにならないようにしてください。ラジカルは不対電子、イオンは陽子数と電子数が異なる原子。

水分子が電離されると、水イオンラジカルと電子が生じます。

水イオンラジカルは非常に不安定で、分解するか他の水分子と反応し、水酸化ラジカルが生じます。

また、H3O+は電子と反応し、水素ラジカルを生成します。

電子の周りにはいくつかの水分子が集まり、塊のように水和電子が生成されます。

放射線生物では、水和について詳しく知る必要は無いので、水和について詳しい説明は、自分で調べてみてください。

このような過程で、放射線が水の中を通過すると、ラジカルが生成されます。

生成されるラジカルの中でOHが最も反応性に富んでおり、間接作用の生物影響に寄与しています。

放射線によって生成されたラジカルはどのような反応をするかです。

生体高分子(R-H)から水素を引きはがし、生体高分子ラジカルが生じます。このラジカルがさらに他の生体高分子と反応し、それを繰り替えし

最終的に標的分子を分子損傷を起こします。

生成されたラジカルは拡散して広がっていきますが、ラジカル同士再結合するものもあります。

黒板にあるようになります。

ラジカルの再結合はラジカル同士の距離が近いと起きやすいです。

ラジカルの生成密度は、低LET放射線は疎、高LET放射線は密であることから、

低LETは間接作用の寄与が大きく、高LETは間接作用の寄与が小さくなります。

放射線被ばくによる軽減する薬として、放射線防護剤があります。ラジカルスカベンジャーとも言います。

多くはSH(スルホン)基をもっています。放射線によって生じたラジカルと反応し、SH基の水素をラジカルに与えて、ラジカルを修復し、軽減します。

防護剤は被ばく後に投与しても効果はありません。

放射線防護剤として、システイン、システアミン、グルタチオンなど開発されています。

間接作用の修飾作用についてです。修飾作用とは、活性化あるいは、抑制する作用のことです。

間接作用の修飾作用は、希釈効果、酸素効果、保護効果、温度効果があります。

修飾作用なので、間接作用の影響を軽減させるもの、増加させるものがあります。

保護効果は、すでに説明した放射線防護剤の話です。

それ以外の効果が、どういう作用が起こるのかそれぞれ見ていきましょう。

溶液に一定線量を照射した場合、間接作用では溶質の濃度に関係なく一定のラジカルがつくられることから、反応を起こす溶質の数も一定です。

そのため、濃度が低いとき(希釈したとき)の方が放射線による溶質分子の変化の割合が大きくなります。それが希釈効果です。

図で説明すると、密度(濃度)が高いと青玉が多く、低いと青玉が少ないです。

放射線が入射してきたとき、生成されるラジカル(赤玉)の数は溶液の密度に関係なく同じです。その赤玉が青玉に攻撃するとすると、

密度が低い(青玉が少ない)方が影響大きいですね。これで理解できると思います。

黒板に希釈効果を示す濃度と希釈効果の関係図を示します。

まずは左の図から

濃度と不活化する分子の数の関係です。一定の線量を照射した場合、不活化する分子の数は間接作用では一定で、直接作用では濃度に比例して

多くなります。

右の図は溶質全体の不活化分子の割合を見ています。間接作用では濃度が増加すると減少するが、直接作用では濃度が増加しても変化しません。

酸素効果です。組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果と言い、酸素の酸素の存在下では、無酸素よりも放射線の生物効果が大きくなります。

酸素が多い方が放射線の影響が大きくなるってことです。

この理由としては、ラジカルが酸素と反応してより有害なラジカルになる、損傷した部位が酸素と反応して修復されにくくなるためと言われています。

酸素効果の大きさを表す指標としてOERです。同じ生物学的効果を得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比です。

放射線を照射するときの酸素分圧で酸素効果の大きさが決まりますので、照射後に酸素分圧を高くしても酸素効果は得られません。

低LET放射線では、酸素効果が高く、高LET放射線では、酸素効果が小さいです。

温度が低下した状態では放射線の影響が小さくなることを温度効果と言います。

温度が低い状態ではラジカルの拡散が減少するためだと言われています。凍結した状態では、さらに拡散が減少するのでより影響は低減します。それを凍結効果と言います。

ラジカルと言ってると難しいかもしれませんが、中学高校の化学を思い出して、図を見てください。

温度が高い方が、溶液内の原子、分子の動きが活発ですよね。原子、分子が活発に動くということは、ラジカルも原子なので活発に動きますので、

悪者がより動き回ると考えると放射線の影響が大きくなるといえますね。

ちなみに、今までラジカルは悪者、有害みたいな話をしてましたが、正常細胞からしたら悪者ですよね。

しかし、がん細胞にもラジカルは攻撃しますから、がん細胞に対しては勇者ですよね。放射線のがん治療では、がん細胞に対して照射しますから、温度効果で温度高めて(42度程度)

放射線の影響を高くしています。

以上で、分子レベルの影響 間接作用、直接作用について終わります。お疲れ様でした。

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