こんにちは。今回は放射線の細胞レベルの影響についての話です。細胞レベルの話はボリューミーですので、いくつかに分けて講義していきます。
細胞とは、からだを作る小さな構造の単位です。人間の体は約60兆個の細胞でできています。その細胞のレベルでは、どのような影響があるのか見ていきます。
細胞分裂については中学校理科、高校生物ですでに習っていると思います。個々では端的に説明していきますので、詳しいことは復習してみてください。
細胞は細胞分裂を繰り返して増殖していきます。分裂から次の分裂の始まるまでの1サイクルを細胞周期といいます。
M期→G1期→S期→G2期→M期とサイクルします。M期は分裂期、S期はDNA合成期です。その間にG1、G2期があります。
また、細胞分裂を行わずG1期に長くとどまっている場合があり、それをG0期とよびます。
分裂期以外の時期はまとめて間期とよびます。間期死は間期の死ってことです(後で出てきます)。
私たちの体の細胞の大部分は、組織が損傷して細胞の再生が必要なときは細胞分裂しますが、普段はしていません。
それは、私たちの体の細胞の話であり、他のある細胞では一定の頻度で細胞分裂し、増殖しています。それらの細胞に対して細胞周期があるといえます。
細胞周期については先ほど説明しましたが、細胞周期の進行にはチェックポイントがあり、きちんとやることやってるか監視されています。
それぞれの道に看守が立っていて、クリアしないと先に進めない感じですね。
チェックポイントは、G1期チェックポイント、S期チェックポイント、G2期チェックポイントがあります。きちんとDNAの修復はできたのか?などチェックするリストみたいなのがあります。
チェック内容については、主任者試験では必要無いですが、調べてみるといいかもしれません。
本題です。ここに放射線が照射されるとどうなるかです。
細胞に放射線が照射されると、分裂低下や細胞分裂の遅延がおこります。
放射線によってDNAが傷つけられ、チェックポイントで異常が発見され、DNA修復をするために進行がとまり、分裂遅延が起こるのです。
放射線による遅延時間は照射線量に比例し、10Gy程度までの照射だと、1Gyあたり1時間程度の遅延が発生します。
これは試験でもたびたび聞かれますが、
毛細血管拡張性運動失調症という常染色体劣勢遺伝病があります。この患者さんはチェックポイントが備わっていないので、異常細胞がそのまま分裂、増殖し続け、
高確率でがんを発症してしまいます。
細胞周期の放射線の感受性についてです。黒板の図は、このまま覚えても良いと思います。
縦軸に細胞生存率、横軸に細胞周期です。
細胞生存率は、0に近い方が、生存確率が小さいということです。
放射線感受性が高いのは、M期、G1期の終わりからS期のはじめ、G2からM期
感受性が低いのは、早期のG1期、S期後半からG2期です。S期後半からG2期の感受性の低いのは、相同組み換えの時につかう相同DNAがS期に複製され、その後すぐなので、
放射線の影響を受けても効率よく修復ができるためだと言われています。
感受性が高いということは、細胞生存率が小さいということです。
これから改めて、何が言えるのかというと、細胞分裂している中、放射線が照射されると、細胞周期によって放射線の影響の度合いが変わってきます。M期が
一番影響を受けやすいということが言えます。
細胞死に関してです。これから講義することは放射線の影響だけで無く、他の因子でも起こることです。放射線生物ですので、放射線の影響としています。
細胞がある程度の放射線を照射されると細胞死を起こします。
細胞死は大きく分けて2つに分類されます。
細胞周期の観点より、増殖死と間期死、死の形態よりネクローシスとアポトーシスです。
増殖死はM期を経てから細胞が死にます。数回分裂してから死に至ります。
無限の細胞分裂、増殖能を失った状態を増殖死としています。
骨髄や腸の幹細胞等の細胞分裂が盛んな細胞で起こります。数Gy程度の線量で発生します。
増殖死では、細胞分裂が停止しても、DNAや蛋白質合成は続けられており(巨細胞が形成)、その影響で、近くに存在している細胞に影響を与えてしまします。
間期死はM期を経ずに(間期中に)細胞が死にます。分裂することなく死に至ります。
神経細胞、筋細胞等の分化した細胞で見られます。
分化細胞は、細胞分裂を経て役割をもった細胞のことで、簡単にいうと分裂しきった細胞って感じですかね。
大線量の放射線被ばくにより、分裂することなく死に至ります。細胞分裂している細胞でも分裂死が起こる線量よりも大きな線量が与えられると間期死が起こります。
ネクローシスとアポトーシスについてです。
ネクローシスは受動的な死、アポトーシスは能動的な死と説明されます。
正直詳しく内容を知らなくても黒板にまとめた特徴の表を覚えるだけで点数はとれます。
余裕のない方はこの表の事を覚えましょう。余裕のある方は、このまま講義を見てください。
細胞の構成は、おいておいて、細胞の中は核があり、ミトコンドリアや小胞体などさまざまなものが入っています。
ネクローシスでは、その細胞が風船みたいに大きく膨張していきます。細胞自体も膨張しますが、中に入ってるものも膨張していきます。
これが特徴にもあった、細胞や核の膨潤です。
膨らんでいくと、風船に穴があいて空気が抜けるように、細胞膜が破れ、細胞の中のものが流出します。核もミトコンドリアの膜も破れます。
黒板の図では、白線が細胞膜としています。
このようにして、ネクローシスで細胞は死に至ります。
放射線被ばく、その他影響により細胞が損傷を受けると、機能障害がおき、生命体として維持することができなくなり、細胞はふくれ、構造破壊が起き死亡します。
このようにネクローシスは他からの影響を受けないと発生しませんので、受動的であり、細胞他殺とも言えるのです。
次はアポトーシスです。
アポトーシスは、細胞が小さく凝縮されていきます。細胞の中のものも小さく凝縮されていきます。
そうすると、クロマチンの凝縮も起こります。クロマチンの凝縮は簡単に言うと、核の中のDNAも小さく凝縮されてるって感じです。
その次に、細胞の断片化が起こります。断片化はちぎれるって感じですかね。細胞膜は破れないまま、小さく断片化します。小さく断片化したのを
アポトーシス小体といいます。そして、アポトーシス小体は、貪食能のマクロファージに食べられて跡形もなく細胞はなくなります。
アポトーシスは、何かの影響を受けて起きるとかではなく、細胞を正常に保つために不要細胞や異常細胞が能動的に(自ら)排除機構が機能し、死に至ります。
細胞自殺とも言われます。
ようするに、細胞それぞれには排除機能をもったプログラムみたいなのが埋め込まれていて、異常な細胞に変化したり、異常な細胞が生成されたりすると、
自動的にプログラムが動き出し、アポトーシスを発生させて、排除させる感じです。プログラム死と言われることもあります。
以上で、細胞レベルの影響 細胞について は終わります。お疲れ様でした。
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