こんにちは。今回は個体レベルの影響 全身被ばくによる放射線障害 確率的影響についてです。
確率的影響は発がんと遺伝的影響でしたね。
まずは、放射線発がんです。
放射線に誘発されて起こるがんの事です。
昔は放射線の危険性が周知、理解されておらず、無防備によりさまざまながんが引き起こされました。
試験でも放射線発がんについて、職業被ばく、医療被ばくとして出題されますので、まとめます。問題で出てきたらもう一度確認しましょう。
職業被ばくです。
皮膚がんは、X線の管球工場の作業者が作業の中、皮膚に大量の被ばくを受けており、皮膚がんが誘発されてました。
肺がんは、ウラン鉱山の鉱夫がラジウムを含んだ石から発生するラドンを吸入し、肺がんが誘発されてました。
骨がんは、ラジウム時計文字盤塗装工がラジウムを含んだ蛍光塗料を経口摂取により誘発されました。昔の人は、筆の毛先を整えるために口でなめてました。それが原因ですね。
次は、医療被ばくです。
乳がんは、胸部X線透視を行った結核患者に乳がんが増加したり、トロトラスト造影剤を投与された患者から肝臓がんが誘発されてました。
トロトラスト造影剤には、トリウムを含んでおり、α線が放出されてました。造影剤が肝臓に沈着することから、肝臓がんが誘発されてました。
この造影剤はかつては使われていましたが、現在では使われていません。
このように、職業被ばく、放射線被ばくによる、放射線誘発がんが生じていました。
見てもらったように、放射線被ばくによってがんが発生します。
放射線被ばくから、発生までの期間を潜伏期といい、最小期間で白血病で2年、固形がんで10年とされています。晩発影響になります。
放射線防護の観点から、単位線量あたりのがん発生確率を算定することが重要となり、単位線量あたりのがん発生率をリスク係数といいます。
2007年勧告で、がんのリスク係数は5.5×10^(-2) Sv^(-1)とされています。
リスク係数は単位線量あたり何人にがんが発生するかを示しています。
人が放射線被ばくを受けて、確率的影響のがん発生が引き起こされる場合、体の組織や臓器によって感受性が違います。放射線感受性によるがんになりやすい臓器かどうかです。
組織荷重係数というものが定められ、実効線量の算出に使用されます。
組織加重係数の数値、大小関係は放射線影響のがんの感受性の大きさを表していると考えても良いと思います。
各組織の和が1になるように規格化されています。
放射線管理の方でも出てきますので、その時にもう一度確認してみてください。
次は、確率的影響の遺伝的影響です。遺伝的影響は、生殖細胞が放射線被ばくを受けることで突然変異が誘発され、それが次世代の子孫に引き継がれて発生します。
男性の精巣の突然変異の感受性についてです。
復習も踏まえて、精巣の放射線感受性は、ベルゴニートリボンドの法則より、精原細胞が最も高く、精子が最も抵抗性です。
突然変異の感受性は、精細胞が最も高く、精原細胞が最も抵抗性です。
これは、代謝が盛んな方が回復しやすいからとされています。
放射線感受性と突然変異感受性しっかり区別して覚えてください。
突然変異の誘発は、放射線の線質によっても異なり、高LET放射線の方が誘発率が高いです。また、線量率効果もあります。
遺伝的影響の発生率の推定には、直説法と間接法(倍加線量法)の2つがあります。
直接法です。発生率を直接測定する方法です。突然変異率を動物実験より求め、そこから線量率効果、動物種差など、いくつかの要素から補正、外挿し、
発生率を求めます。
間接法(倍加線量法)です。ヒトの遺伝疾患の自然発生率と動物実験による倍加線量を比較して推定する方法です。
倍加線量とは、自然突然変異率を2倍にするのに必要な線量のことをいいます。
ヒトの倍加線量は1Gyとされています。
倍加線量の値が大きい程、感受性は低いということです。
これで、今回の講義は終わりです。放射線感受性と突然変異感受性の区別はしっかりできるようにしましょう。おつかれさまでした。
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