こんにちは。今回は胎内被ばく、そして胎児影響について見ていきます。
母体が妊娠中に放射線被ばくを受けると、おなかの中の赤ちゃん、胎児も被ばくする可能性があります。胎児が被ばくすることを胎内被ばくといいます。
まずは、胎内被ばくの特徴についてです。特徴を黒板に示しました。
①放射線感受性が高いです。
分化の程度が低く、細胞増殖が活発であるためです。
②放射線障害が、成長の過程で増幅される。
③時期特異性がある
どの時期に被ばくしたかによって、反応の現れ方が違います。
このことを意識し、次から見ていきましょう。
胎児の影響で考える事は時期特異性です。
放射線影響の観点から、受精から生まれるまでの期間を、着床前期、器官形成期、胎児期の3つに分けられます。
分けて見ていきたいと思います。
①着床前期
受精卵が子宮壁に着床するまでの期間のことをいい、期間としては受精から8日目までの期間です。
しきい線量は0.1Gyです。
放射線被ばくの影響としては、受精卵の死亡(胚死亡)するか、正常に成長するかです。
②器官形成期です。
器官・組織の基となる細胞が生成される時期で、受精後9日後から8週目までです。
しきい線量は0.1Gyです。
影響としては、奇形が起こるか、新生児死亡です。
原爆被ばく者の調査より、器官形成期の被ばくによる奇形として観察されたのは、小頭症のみです。
③胎児期です。
胎児期に入ると、ヒトの形がわかるようになり、細胞分裂で細胞数を増やして成長しています。受精8週後から出生までです。
8週から25週の被ばくではしきい線量が0.2~0.4Gyで、精神発達遅延が起こります。8週から15週が感受性が高いです。また、それ以外の時期では観察されません。
胎児期全体では、0.5~1Gyで、発育遅延が起こります。
脳の発生段階の関係から8~15週での精神遅延が誘発されます。
ここで、まとめます。しっかり区別して覚えましょう。
ここまでは、確定的影響です。
全ての時期で確率的影響が発生する可能性があります。
発がんに関しては、成人よりもリスク係数は2~3倍高いです。また、遺伝的影響は成人とほぼ同じです。
胎児の被ばく線量の推定は、お母さんの子宮線量が用いられることもあります。
ここで、最後に10days ruleの説明をします。
1965年にICRP(国際放射線防護委員会)より10days ruleが勧告されました。
内容は、妊娠可能な女性の下腹部が照射野に含まれる検査を行う際、月経開始後の10日以内に行うように!という内容です。
もちろん緊急性が高い場合は除かれます。
女性が知らない間に妊娠していて、検査によって被ばくを受ける危険性を考えて勧告されたものです。
しかし、それでは厳しすぎるだろうという批判やマウス実験等で得られた結果と比較した意見より、
1990年には、「妊娠が疑われる女性の下腹部照射は避けるべき」と勧告されました。
これで今回の講義は終わりです。時期特異性を分かり、しきい線量、放射線影響をしっかり区別して覚えてください。お疲れ様でした。
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